散歩道
主人の葬儀を執り行ったのは春先のことでしたが、2年以上も入院生活を送っていて結局一度も自宅へは戻れないままその時を迎えてしまいました。
お葬式の打ち合わせで、主人は生前よく春になると自宅付近の桜通りを孫や息子家族と一緒に散歩していたとお話をしたところ、担当の方より「よろしければ火葬場へ向かう際にその桜通りを通りましょうか?」と提案いただき「ぜひ」とお願いさせていただきました。
ただ、その付近を通るだけでも嬉しかったのに、桜通りのコースで少しだけ車を止めて時間を設けてくださいました。火葬場は時間が決まっていると伺っていたので「時間は大丈夫ですか?」と尋ねたところ「この時間をお取りしたくて、15分出発を早めていますので、ご安心ください」と教えていただきました。本当にこのときの時間は何にも代えがたいものでした。
闘病生活が長くなると、時には喧嘩をしてしまったこともあり、八つ当たりをされて言い返してしまったこともありました。そのことをすごく後悔していたのですが「最後に一緒にここに来られてよかったね」と主人に語りかけると同時に私も救われた気持ちになれました。
また、せっかくなので散っていた桜の花びらをいくらか手に取り、こちらの桜を棺に入れたいとお願いしたところ、嫌な顔ひとつせず笑顔でハンカチに包み、後ほど棺に入れてくださいました。
些細なことかもしれませんが、私にとってはとても貴重な時間となりました。ありがとうございました。
担当者より
愛する人とのお別れ程辛いものはございません。
最後に「ありがとうございました」と、感謝のお言葉をいただけ、少しでもご家族様のお気持ちに寄り添うことができたのであれば、担当させていただいた者として何よりでございます。